バンガード(VANGUARD)V型2気筒エンジンは優秀なエンジンですが、定期的なメンテナンスが欠かせません。


内部の消耗部品や潤滑油は使用とともに劣化し、放置すれば故障や性能低下、最悪の場合は重大なトラブルを引き起こす可能性があります。
定期的な点検と整備を行うことで、小さな異常を早期に発見し、修理費やダウンタイムのリスクを最小限に抑えることができます。
また、適切なメンテナンスは製品寿命の延長や燃費・効率の向上にもつながり、結果としてコスト削減と業務の安定運用に直結します。
大切な機械を長く、安心して使い続けるためにも、メンテナンスは「コスト」ではなく「投資」として捉えるべきです。

対象のモデル

VANGUARD(バンガード) V型2気筒エンジン
                  スモールブロック

    ・モデル 2964/2967(479cc) - 14.0GHP(横軸/縦軸)
    ・モデル 3054/3057(479cc) - 16.0GHP(横軸/縦軸)
    ・モデル 3564/3567(570cc) - 18.0GHP(横軸/縦軸)
    ・モデル 3854/3857(627cc) - 21.0GHP(横軸/縦軸)
    ・モデル 3864/3867(627cc) - 23.0GHP(横軸/縦軸)

メンテナンス項目

     1,エンジンオイル
     2,エアクリーナー
     3,点火プラグ
     4,オイルフィルター
     5,燃料フィルター
     6,バルブクリアランス
     7,冷却システム

1,エンジンオイルエンジンオイル

目的              
このエンジンは空冷エンジンですので、エンジンオイル管理は水冷エンジンより厳密に行う必要があります。
オイル交換、オイル量の確認を怠るとクランクシャフト、コネクティングロッドが焼き付きシリンダブロックの破損まで至ります。

使用するエンジンオイル     
規格     : API規格SF級以上
ベースオイル : 化学合成油、部分合成油、鉱物油 どれでも使用可能
粘度     : 0W-30 / 5W-30 / 10W-30 / 15W-30 どれでも使用可能ですが「30」を厳守
         ※除雪機などは0W-30など低温に適したエンジンオイルを推奨
         ※芝刈機、雑草刈機などは10W-30などを推奨

点検頻度
作業前に毎回確認もしくは8時間毎にオイル量の確認
※エンジンオイルが検油棒(ディップスティック)の上限値にあることを確認、上限値になければオイルを足してください。

交換頻度
100時間毎もしくは一年に一度交換

オイル量
仕様上1.4L程度となっていますが、強制潤滑エンジンのためすべては抜けません。
目安1.0L~1.2L程度
エンジンオイルを入れすぎると、余分なオイルはブリーザーシステムからエアクリーナーへエンジンオイルが排出されてしまいます。
エンジンオイルがエアクリーナーに付着するとエアクリーナーの寿命も短くなりますので、必ず上限以上にエンジンオイルを入れないようにしてください。

オイル量確認の目安
横軸 : 検油棒(ディップスティック)が差し込み式 : 一番奥まで差し込んでオイル量を確認
縦軸 : 検油棒(ディップスティック)がねじ込み式 : ねじ込んだ状態でオイル量を確認  

注意点
オイルを抜くためのドレンボルトはテーパー式のねじになっています。
力いっぱい締め付けて行くとシリンダブロックが割れます。
→シリンダブロック交換になります。

2,エアクリーナー

目的
このエンジンには一般的にはデュアルエレメントと呼ばれるエアクリーナーカートリッジとスポンジ製のプレフィルターが装備されています。
仕様によってはサイクロンエアクリーナーが装備されています。
エアクリーナーが汚れると混合気の燃料調整が狂い、ガソリンが濃くなり調子が悪くなります。
更に、ブリーザーシステムからエンジンオイルが吸い上げられやすくなりキャブレターの汚れ、排気ガスから白煙が出る、燃費の悪化、エンジンオイル消費が多くなるなどの症状が発生します。

交換頻度
使用環境により大きく左右されますが、エンジンオイルを交換する際には必ず汚れの状況を確認してください。
取扱説明書上は以下となっています。
 ・100時間毎に点検清掃もしくは交換
 ・400時間毎には必ず交換

清掃方法

プレフィルター : スポンジ製のフィルター
中性洗剤を使用して水洗いし、完全に乾燥させてください。

エアクリーナーカートリッジ : 円柱型のペーパーフィルター
圧搾空気を使用してほこりを吹き飛ばしてください。
あまり高圧で近くでエアブローすると破損する場合があるので注意してください。

注意点
排気量によってサイズが違います。
下記の形状であれば部品番号は以下となります。

プレフィルター
 モデル 29/30/35用  : 272490S
     385/386用   : 692520

エアクリーナーカートリッジ
 モデル 29/30/35用  : 394018S
     385/386用   : 692519

3,点火プラグ

目的
ガソリンエンジンでは点火プラグが装備されていますが、消耗品ですので定期的な点検、交換が必要になります。
汚損した状態での使用や、長期間使用での劣化により火花が飛びにくくなり、始動不良、高負荷時の失火の原因となります。

米国の会社だけにCHAMPION社のスパークプラグが純正指定されています。

交換頻度
取扱説明書上では以下の通りとなっています。

・100時間毎に交換

実際では使用状況にもよります。また、エアクリーナー項でも説明した通り、エアクリーナーのメンテナンス不足でも寿命が短くなります。

部品番号
部品番号はエンジンによって指定されている点火プラグが違いますので部品表をご確認ください。

4,オイルフィルター

目的
エンジンオイルの汚れを取るために装備されています。
オイルフィルターを交換しないと、汚れで目詰まりするとオイルポンプや潤滑経路の詰まりに発展し、エンジン焼き付きの原因となります。

交換頻度
・100時間毎もしくは一年に一度に交換
※オイル交換時に合わせて交換

部品番号
オイルフィルター : 842921

5,燃料フィルター

目的
燃料であるガソリンの汚れを取るために装備されています。
燃料フィルターを交換しないと、ガソリンがエンジンに供給されなくなり、エンジンが停止してしまいます。

交換頻度
・400時間毎
※燃料の汚れ次第で寿命は大きく変わります。
 燃料フィルターの中が黒ずんでいるようであれば早期の交換を推奨します。

部品番号
・ボディの長さ60mm : 845125
・ボディの長さ35mm : 84001895

6,バルブクリアランスの調整確認

前提
バルブクリアランスの調整には特殊工具が必要となります。
製品のご購入店に依頼されることを推奨いたします。

目的
このエンジンはOHV(オーバーヘッドバルブ)式バルブシステムを装備しています。
使用時間が長くなるとバルブクリアランスが大きくなり、異音の発生、始動不良の原因となります。
長期間メンテナンスをせずに使用を続けると、オイルにじみの増加、始動性悪化に伴いスターターモーターの焼損などの原因となります。

調整頻度
・250時間毎に点検調整

調整寸法
・吸排気ともに冷感時   : 0.10mm - 0.15mm

必要部品
・ロッカーカバーガスケット   : 806039S  (必要数 2個)
・シーリングワッシャー     : 807085  (必要数 4個)
 ※最近のエンジンではシーリングワッシャーが廃止されています。

注意点
ロッカーカバーガスケットは250時間毎に交換することを前提に張り付きにくい材料になっています。
長時間交換せずに使用すると硬化し、オイルにじみの原因となります。

7,冷却システムの清掃

前提
冷却システムを分解し清掃するには、エンジンの分解が必要となります。
製品のご購入店に依頼されることを推奨いたします。

目的
このエンジンはフライホイールに装備されている冷却ファンによりエンジンを冷却しています。
長期間使用したエンジンではシリンダフィンの隙間に砂汚れ、油汚れにより詰まることでエンジンの冷却性能が低下します。
そのままの状態で使用を続けるとオーバーヒートによりエンジンに甚大なダメージとなる原因となります。

方法
上部の写真まで汚れが蓄積した場合、エアクリーナーボックス、エアガイドを取り外しての洗浄が必要となります。
清掃するには分解清掃が必要となりますのでご購入店にご相談されることを推奨します。

製品をご使用後には、エアブローなどで定期的に清掃することを推奨します。